大学院Graduate School

[優秀賞]
鈴木藤成|青社会のトートロジー
山形県出身


芸術文化専攻長 青山ひろゆき 評
 我々の現代性とは如何にあるのだろうか。本作品は、東北という地域性を背景に、まさにその問いを投げかける作品である。
 テクノロジーが日常の不便さや物質的な劣化を覆い隠す一方で、山間地域では高齢化が進行し、日常生活の維持すら困難になる現実が存在する。作中で象徴的に扱われる「ブルーシート」は、更新されることのない物質の仮初めの覆いであり、それが風景の一部として定着することで、むしろ地域の「色」として認識され始めている。この視覚的なメタファーは、単なる老朽化の痕跡ではなく、地域社会の停滞や変化の不在を鮮烈に可視化する。
 東北という土地でのフィールドワークを重ね、地元?米沢という具体的な場に根差した制作を行っている。この過程は、作品に単なる表層的なリアリズムではなく、実体験に裏打ちされた信憑性を与えている。さらに膨大なリサーチと文献購読を通じ、「青社会」という概念が単なる印象論ではなく、社会学的?文化的な考察に基づいて構築されている点も見逃せない。特筆すべきは、作品が山間地域の存在を再び視界の中心へと引き戻す力を持っていることだ。我々が日常的に無意識のうちに視覚の片隅へ追いやってしまう風景が、ここでは圧倒的なインパクトと共に現前する。その強烈な存在感は、我々が避けてきた地域の現実と向き合わせ、問い直す契機となる。
 我々が何を見ようとし、何を見逃してきたのかを問い直す見事な研究制作である。アートが社会を顕在化する装置であるならば、本作はまさにその役割を果たし、我々に新たな視座を提供している。