[優秀賞]
柏葉歩未|この優しさに あなたを思い出した
茨城県出身
松本由衣ゼミ
2500×7000×150㎜ ナイロン紗/糸
「優しさ」について悩むことから作品にした。誰かの心を開いた「優しさ」は、誰かの心を傷つけることもある。これまでの経験を通して学んだことから、私の中に「優しさ」とは何かという問いが生まれた。誰かから自分に対して向けられた思いに、心が動く瞬間がある。そこに感じるのは、温かさなのか、痛みなのかを考えてほしい。心に触れて考え続けることこそが、今の私たちには求められているのではないだろうか。
松本由衣 専任講師 評
手を動かし、「かわいい」や「好き」を見つけて楽しく作品を作り上げていくタイプ。彼女にはそんな印象を持っていた。3年次に日常を切り取った情景のスケッチをミシンを使い糸で描き、素材のレイヤーを上手く使い、平面的な線だけでなく空間を演出する作品を制作した。卒業制作も最初の段階ではその方向性で具象的なモチーフを提案していた。そこから日々手を動かしながら、自問自答していて、そこにはいつもの楽しそうにという時間より、悩める姿が多くあった。そうしていくうちに創作のなかの「なんとなく」が少しずつ消えていき、最終的に「優しさについて」他者に問いかけるテーマに絞り込んでからは、密度を増していった。テキスタイルの素材ならではの表現になっていて、その色彩と空間の使い方が上手い。軽やかな素材を使いながらも、執拗な糸の集積にはエネルギーを感じる作品に仕上がった。是非、近くからと遠くから、両方の見え方を楽しんでもらいたい。