美術科 版画コースDepartment of Fine Arts Printmaking

[最優秀賞]
中村珠莉|①剥がれた記憶と余白 ②余白の向こう側 ③余白に刻まれた記憶 ④反映 逃亡/帰宅
山形県出身
シルクスクリーン、リソグラフ


中村桂子 教授 評
 例えばキャンバスや紙に筆で絵具をのせた瞬間から、絵画制作の作者はライブでその変化を見ながら完成に導く。一方、版を作り印刷するまで結果が見えない版表現は、手や機材をコントロールし想像力と五感を駆使しつつ、頭の中のイメージを工程ごとに明らかにし確認しながら進行するというオリエンテーリングのような制作が求められる。
 今回の中村さんの現在も過去も自身の内に起きながら曖昧で隔てられた記憶の距離を明らかにする、ともすれば感情や感覚に陥りがちな試みが物質として力強くおおらかで堂々と見えるのは、自身への問いかけを一つずつ写真画像や、時間や記憶に見立てた薄い和紙をその上に貼り込み剥がすなどの行為に置き換え、それを客観的に検証しながら構築していった版表現で培った自身の制作プロセスへの信頼の結果と思える。何かを自分なりに測るコンパスやメジャーを手に入れた、とも言えるかもしれない。次はどこで何を計測するのか。楽しみである。