[優秀賞]
兼重青空|鹿の記憶
栃木県出身
狩野宏明ゼミ
2,273×3,636×3.3mm 油彩、キャンバス
狩野宏明 准教授 評
兼重さんは、大学入学当初から一貫して骨を描き続けてきた。骨への愛着は幼少期まで遡り、大切な家族の記憶とも密接に繋がっている。
彼女の描く骨は、一見して何の動物の骨か分からないように、描く角度やトリミングが巧妙に練られている。実物よりはるかに巨大に描かれ、独特な切り取り方で捉えられた骨は、まるで異世界の生物のような不可思議な存在として私たちに迫ってくる。この不可思議さは、私たちが皮膚の下に共通して持っていながらも普段は見ることができない骨という存在について、熟考しながら描く彼女の眼差しそのものである。
西洋絵画史では、生命の儚さを主題として描く寓意的な静物画のジャンルとして「ヴァニタス」がある。ヴァニタスには骸骨がよく描かれる。生命についての深い思考から生み出される彼女の骨の絵画は、現代におけるヴァニタスの変奏とも捉えられる。
これまで培った高い描写力はもとより、アトリエで早朝から毎日黙々と描く集中力と持続力そして骨への強い思い入れが結実した力作である。