[優秀賞]
中泉椛|秘密基地
栃木県出身
細川貴司ゼミ
2800×5200×5mm 油彩?パネル
細川貴司 准教授 評
幼少期の純粋なまなざしと現在の感性が交差して生まれたこの作品は、記憶と表現が織り成す特別な世界を描き出しています。ムラサキオカヤドカリの幽霊というユニークなモチーフは、幻想的でありながら、母の故郷の風景や子どもの頃に感じた目に見えない存在への憧れと深く結びついているようです。
中泉さんは、1年生の時に宇宙服を着た人が植物に覆われた廃墟に立つ姿を描き、山形県展で最優秀賞を受賞しました。その作品は、異空間の魅力を純粋に楽しんでいるかのような印象を与えるものでした。この4年間、彼女は描くことへの情熱を絶やすことなく、自身の世界観を深め続けてきました。特に、髑髏や漫画世界に見られる不気味さにも興味を持った奇妙な好奇心と愛着が同居する独特の感性が印象的です。
卒業制作においても、甲殻類や虫たちの小さな怪獣のような姿を通して描かれるミクロとマクロが行き交う異世界は、私たちが忘れかけていた幼少期の感覚を呼び覚まします。ヤドカリの透けるような質感や微細な筆致が、不思議な親近感と新鮮な驚きを与えてくれます。幼少期の記憶を深く見つめ直し、それを現在の表現へと巧みに昇華しました。その誠実な姿勢と飽くなき追求心が、今回の優秀賞にふさわしい作品を生み出したのだと確信しています。今後もその独自の感性を磨き続け、更なる飛躍を心から期待しています。