下嶋壮汰|怪談史におけるネット怪談―新しい怪談を巡る一考察―
山形県出身
松田俊介ゼミ
目 次 1 はじめに/2 ネット怪談の概要/3 先行研究/4 調査/5 考察/6 おわりに?今後の展望/7 謝辞
怪談は、民俗学の対象として研究されている民俗文化であり、「舞台となる場所」や、「登場する恐怖の対象」?「それによりもたらされる被害の内容」など、話内の様々な要素を通して、各時代の世相を反映しているとされる。これに対して、いわゆるネット怪談は、1980年頃よりインターネット上で流通する怪談の一種とされるものだが、旧来の怪談と同様に世相を反映する文化として存立しているのだろうか。本研究では、民俗学の観点からネット怪談を分析し、「受容?発信する人々の心性」を検討すると共に、ネット怪談を含む現代的視座から“怪談史”を整理し、「恐怖の対象としての怪談と、その受容のあり方」の歴史を構築していく。
常光徹(1999)は、怪談が民話?伝説?世間話的な性質をもち、社会不安や思想などを反映したうえで、半ば実話として受容されているものであると述べた。また、それらの説話は文章媒体のものが主であるため、本研究においては、怪談を「読者に恐怖心を抱かせ、超常的な存在や現象に関わる内容を描く、世相を反映し、現実味を持った文章媒体の説話」として概念規定する。小説など個人の作者性、作家性が明確に表示されている著作物(以降、ホラー作品と呼称する)は対象外とする。伊藤龍平(2016)は、既存の説話体系から外れた、ネット上に流通する新たな形の説話を、“電承説話(以下、ネットロア)”として概念規定した。また、廣田龍平(2024)は、学問的な定義はまだないとしながらも、ネット怪談を「主要な部分がネット上で構築された怪談」としている。これらを参照し、本稿ではネット怪談を、「ネット上の交流をもとに、創作?流通される怪談」として概念規定する。
本研究では、事例の収集?分析をおこなう事例調査、怪談と身近な立場にある人々(怪談師、怪談作家など)への聞き取り調査を実施し、調査結果からネット怪談の発信?受容の様態について分析した。その結果、新たなネット怪談の特性や、怪談に新たな価値を付与する人々の姿を明らかにするとともに、ネット怪談の類型化を行うことができた(表1)。
1. 表1 収集したネット怪談の類型