武田栄人|新庄市における獣害と狩猟者の現況
山形県出身
松田俊介ゼミ
1980年頃から現在にかけて日本の狩猟者は、総じて低収入かつ重労働でありながら、獣害問題において非常に重要な立場とされる。農林水産省(2022)は、2021年の野生鳥獣による全国の農作物被害が約155億円と、前年度と比べて5.9億円増加していると報告した。害獣駆除が深刻化する昨今において、日本の狩猟問題が議論されている中、重要なポジションにいる日本の狩猟者の労働条件が配慮されていない状況は、非常に深刻な社会的課題と言える。また、狩猟者が萎縮するような出来事も起こっている。2023年5月に長野県中野市で起こった事件によって、散弾銃であるハーフライフル銃の規制強化が予定(NHK 2024)されている。さらに、2018年8月に北海道砂川市でヒグマを駆除したハンターが所持許可を取り消され、第二審で逆転敗訴となり(YAHOO! JAPAN 2024)、11月30日に秋田県のスーパーで起きたクマの立てこもり(NHK 2024)などから、日本の狩猟者の立場が追い込まれている。
そんな現況にある狩猟者は、どんな状況にやりがいを感じるものなのか、狩猟者のモチベーションを高めるにはいかなる方法があるかを追求した。新庄市の獣害とその対策は、狩猟者数低迷の点で特徴的であり、日本の狩猟問題を見るうえで重要な現場といえる。
調査の過程で新庄市役所環境課へのインタビューを行った。その際、猟友会が害獣駆除の要請に応じる理由として、「労働ではなく、地域の人たちの命、農作物等の財産を守るという意識。猟友会は農家が多いため、農家の延長でやってくださってる。」という回答をいただいた。筆者はこの回答から、「行政からの依頼」という意識は、新庄市の猟友会にとってあくまで副次的であり、害獣駆除を行った際の報奨金などの「行政からの報酬」という経済的な利権を超えたところに、彼らの労働観があるのではと考察した。また、農家の延長という回答にも注目した。昔ながらの農家というのは地域の共同作業で成り立っており(全国町村会 2000)、農地を守るということは自分の田畑だけでなく、お隣近所も含む観念が示唆される。そのため、農家の延長というのは、ある意味地域単位での「地域の人たちを守る」という自衛的な意識によるものと考えられる。