歴史遺産学科Department of Historic Heritage

本田真将|無形民俗の継承とその変容の課題について 山形県山形市高瀬地区の鹿楽招旭踊を事例に
山形県出身
松田俊介ゼミ

山形市高瀬地区では、地区を代表する無形民俗文化財である「鹿楽招旭踊(からおぎあさひおどり)」(図1)の演舞が行われている。山形市の無形民俗文化財(以下、無形民俗)にも指定されている。しかし、現在、保存会は継承者問題を抱えており、その問題解決のため、参加条件や練習方法を変容させ、活動を続けている。本研究では、継承のために変容を加えた点に着目し、鹿楽招旭踊を事例に、無形民俗の継承とその変容の課題を明らかにし、有効な方法論の提示を目的とする。
 鹿楽招旭踊の継承問題は、2014年頃に保存会内で意識されるようになった。当時、会長が後継者を募ったが、十分な成員を確保できず、その加入条件を変容させるに至った。それまで、「地区内出身者の男性」を条件としていたが、問題解決の第1段階として、地区外出身者も参加を許可する条件に変容させ、2?3年前からは、女性の参加も許可することで、後継者確保を図っていった。継承者問題の理由には、高瀬地区の少子高齢化だけではない。1990年代までは、学校行事の一環として、鹿楽招旭踊を招き、地区内の児童に教授する場所が確保されていたが、現在はそのような機会が失われてしまった。学校のような伝承の場が減少し、「親がやるから、子供もやる」といった、世代間での芸能へのつながりの意識が途絶えつつあるといえる。
 筆者が調査を実施した鹿楽招旭踊以外の無形民俗にも、多くの変容があった。本事例および比較事例のいずれにおける民俗芸能においても、古形を維持させつつ存続させることは、非常に困難であり、変容のあり方を、担い手目線で取捨選択していく段階にあると考えられる。だが、継承のためであれば、無制限に変容が許容されるということではない。例えば、上山の加勢鳥は、県外出身者や外国人参加者を地元民よりも多く参加させ、継承を安定化させている。これを鹿楽招旭踊に即座に適用させることは考えにくいだろう。それは、無形民俗は、その性質上、その地区に住む人々の生活や社会観を反映し、住民自体と分かちがたいものとして受容されているからだ。鹿楽招旭踊では、「親がやるから、子供もやる」という地域の社会観が、継承にも反映されていた。現代の無形民俗における変容と維持の問題には、理念的な方針を打ち立てるよりも、現場の状況や人々の心情などをもとにしたそのときの社会観に着目し、住民目線で実際的な観点から方法論を考察する必要がある。

1. 鹿楽招旭踊の演舞の様子