[最優秀賞]
山口愛莉|きになる木
群馬県出身
安達大悟ゼミ
H3000×W4000×D3000mm 綿布、ポリエステル綿、化学染料
「かわいい」に包まれ、癒されたい。そんな想いを実現するため制作をはじめた。私が考える「かわいい」とは、ちょっとブサイクなものとの対比、大きいものと小さいものとの対比などから生まれるかわいらしさだ。非現実的で思わずクスッと笑ってしまうような光景にもかわいらしさを感じる。そんな私の思う「かわいい」を友禅技法とぬいぐるみ造形の手法で仕上げ、絵本の1ページに入ったかのような気持ちになれる作品を目指した。
安達大悟 准教授 評
彼女も普段から「かわいい」を多用する一人だった。小さい、美しい、不格好、いじらしさなど、何らかの意味から愛すべき対象に漠然と使っていた「かわいい」を自身のテーマとしたことで、捉えどころが難しい言葉の輪郭を認識し、浮き彫りした。それは、他者の共感を得つつ、自身の表現を深めていく指針となった。
友禅という伝統技法で染め上げた布を、ぬいぐるみのような制作方法で仕上げた本作は、随所に丁寧な仕事がなされている。自己満足な表現になりやすいテーマでありながら、様々な線と色を美しくデザインできていることも良い。そして、オブジェクトのようでありインスタレーションのようでもあり、何とも形容し難い表現となった本作は、テキスタイルの新たな可能性を示してくれている。
日常に見つける「かわいい」を誰よりも大切にし、当たり前となっていた感覚に自身の考えを持って臨めたからこそ辿り着けたのだろう。仰々しい考えが必ず最高のクリエーションとなるわけではない。思わず笑ってしまうような表現をこれからも楽しんでほしい。