歴史遺産学科Department of Historic Heritage

髙橋友貴|名取市域の石造狛犬 -形態変遷と地域性-
宮城県出身
北野博司 ゼミ

 石造狛犬は拝殿や鳥居などと共に神社で見られ、社殿前、参道両脇に2基一対で置かれるのが一般的である。(図1)神社によって配置位置や形態など様々で、あえい。対象地域の名取市内を例にあげると、平均一神社に一?二対ほど置かれるが、中には三対や四対なども見られた。また稲荷神社の狐像の様に、犬以外の像を置く場合も見られる。このことは神社の祀る対象などでも変わってくる。 以上の様に名取市では幾つかの石造狛犬が見られるが、網羅的に取り上げた研究はあまり見られない。
 本研究では名取市の石造狛犬の形態などを観察し、空間と時間を考察していく。また型式を見出すための部分とし、姿勢?耳?尾で型式分類も行なった。(図2) 確認された奉納年は19通りで、傾向として古い時期では1750年代からで、直近では2020年のものが確認された。 またA?B?C類は1960年代から入り混じっていた。(図3) 石材種は大きく凝灰岩?安山岩?花崗岩が見られ、A?B類は凝灰岩?安山岩がC類は花崗岩が確認された。
 以上から見えた結果に移る。地域性は山間部?中央部?沿岸部のいずれでA?B?C類系が置かれ、傾向はA?B類系は西部から東部にかけて数が減少し、対してC類系は東部にかけて減少している。また、いずれの地域でA類Ⅰb?A類Ⅰc?C類Ⅱaが確認された。
 時期差は傾向として狛犬A類とB類は同時期に奉納されていることが多く、1700年代中盤から現在まで広がる。対して狛犬C類は1960年に奉納されたものから確認され、A?B類よりも新しい。
 神社系統については、古い時期が多いA?B類は熊野系?道祖系神社が、近年のものが多いC類では薬師系神社が多い。個数差の一方、複数確認されるものもあることから狛犬と神社の繋がり等の根拠は見られない。
 最後の仙台狛犬は先行研究で見られた解釈を当てはめると2種類確認された。一つは正面向きで蹲踞姿勢のA類の富主姫神社。もう一方は片足姿勢の特徴を持つB類全てと対。A類の笠島道祖神社狛犬1?3と多賀神社狛犬2が近い。要因として、仙台近辺による発注の容易さや奥州街道など往来する地域的要因が考えられる。前者は作り手が近辺にいること、もしくは作り手自体が名取周辺にいる場合に考えられる。後者は往来する環境下で、狛犬の情報や文化が他地域から伝わった可能性も考えられる。いずれにおいても仙台狛犬を主軸とした研究が別途必要で、定義付けが課題である。?

1. 狛犬の一例

2. 型式一覧

3. 奉納年記載狛犬