路線バスによる通勤?通学時間のライフデザイン ?渋滞がもたらす空白の時間を活用する新しい公共交通?
小笠原将矢
宮城県出身
志村直愛ゼミ
宮城県仙台市の北部に隣接する富谷市はベッドタウンとして宅地開発が勧められている地域である。明石台スマートコモンシティや新富谷ガーデンシティなどニュータウンが整備され、それに伴い富谷市の人口は増加傾向にある。商業施設も増加していることで富谷市は賑やかで過ごしやすい街に近づいているが、長年抱える大きな問題は解決の糸口が見つかっていない。それは、富谷?仙台間をつなぐ国道4号線?県道22号線で起こる通勤?通学時間の交通渋滞である(図1)。富谷市に在住する就業者?学生の内の69.8%が仙台市に移動する人々であり、富谷市から仙台中心市街地に一直線で繋がる国道4号線?県道22号線に移動者が集中する。自動車保有率も年々上昇していることからこの2道路は大きな渋滞を引き起こす。富谷市は公共交通の利用を促すが、富谷?泉中央駅間は地下鉄がなく移動手段が路線バスのみであること、必然的に利用者が増えるためバス内の空間が密集状態になり心身的疲労が大きいといった利便性や快適性の低さが原因で利用率が上がらない状況である。また、富谷市民は仙台市営地下鉄の延伸など公共交通機関の発展に希望を求めている。しかし調査費や施工費用に莫大な資金がかかる等財政面が厳しいことから実現には至らなかった。
このように新しい交通機関の導入は現実的でなく、渋滞の解消は難しい。そこで本研究では、交通問題と向き合う中で「渋滞と共存する」という新たな思考を取り入れた国道4号線?県道22号線を利用した仙台駅直行型通勤?通学者専用バスの運行を提案する(図2)。富谷市の渋滞時のバス内空間は立ち乗りにより密集化している。密集化による心身的疲労を抑制するために三列独立シート式2階建てバスを導入し、完全予約着席型とし、個人がリラックスして自由に活動できるように各座席に設備を搭載した。また車内の快適性に加えて通勤?通学時間帯限定で順路にバス専用レーンを取り入れ、快適な空間でリラックスしながら円滑に移動することが可能である。
渋滞解消という大きな問題を一手で解決させるのではなく、まず渋滞が起こる街とどのように共存していくのか。また、完全な新しいものではなく、既存の公共交通に新たな価値を見出し、公共交通の魅力を利用者に伝えることが大切である。