[優秀賞]
蓮實史也/細井侑志/加藤健太|もぬけの家
栃木県出身/宮城県出身/宮城県出身
林海象?中村高寛ゼミ
映画
林海象 教授 評
映画とは時間の旅である。
その旅は、未来に向かうこともあれば、過去に向かうこともある。
この『もぬけの家』は、加藤君の過去に向き合う映画である。
そして細井君、蓮實君はその加藤君の思いを共有し、自分に向きあった。
作家は自分を構成している時間を、再確認したいと思う衝動がある。
加藤君のシナリオは過去の彼の物語とは違い、今回は自分の時間と向き合おうとした。
それは創作者として自然なことであり、今までを理解できなければ、未来を想像することができないという行為である。
この映画はそこに挑んだ。過去とは記憶であり、その記憶は大いに痛い。
加藤君はその痛さの再確認により、未来を見ようとしたのだ。
そしてその記憶の痛さは、加藤君だけのものではなく、この映画を共に創作した、細井君や蓮實君の心の中にもあるものだ。
そしてそれは、彼らだけではなく私たち全ての心にもあるものだ。
だからこの映画は人間誰しもにある「不在感」を描いた。
その題材に挑んだこと、そして三人が協力してこの映画を創ったことは、大いなる賞賛に価する。
そして映画はここまでではなく、人生と同じようにこれからも続くのだという事を、三人の心に刻んでほしいと願う。
拍手を贈りたい。