大学院Graduate School

[優秀賞]
土田翔(芸術文化専攻 複合芸術研究領域)|河山帯礪(屋内)/EXTEND直写 -河山帯礪-(屋外)
福島県出身
三瀬夏之介ゼミ
1800mm×2700mm(屋内)/4500mm×5400mm(屋外) 絵画?インスタレーション

日本画家小松均による「直写」法を制作の基盤に、描かれる対象との同化を目的とする。今回は常日頃から制作現場に存在するものを支示体に、直写を拡張する試みを行った。屋内では外気から守られるように壁に囲まれた展示空間の中に、和紙に描いた自立する絵画が会場内の最深部にひっそりと佇む。屋内外に1つずつ設置したバラックを通し絵画のあり方を模索する。写実の限界を身体と直写から情念を映し出す感覚的リアルを追求する。


深井聡一郎 芸術文化専攻長 評
人生を動かすほどの出会いに直面できた人は幸福である。土田は日本画家小松均の直写との出会いから、それを現代に受け継ぐ者を目指す事になる。この二年描く事と、描くという行為を解体しパフォーマンスしてきた彼だが、その二極化された、同一作者の作品とは思えない世界観が、本作に於いては融合する兆しが表れた。直写は理論上、目からの情報を直で筆に伝えるものだ。これは観察し得た情報を脳内に取り込み、筆を介して紙に移す技術ではなく、情報が土田という器官を介して直に紙に写すカメラ?オブスキュラのようなものである。弛まぬリサーチや実証と共に表れたインスタレーションに次への可能性を感じる作品となった。
土田は歴史探求と現況把握を繰り返し、その垂直と水平の両軸の混じり合う地点となる現在を模索し続けた。これは本学芸術文化専攻の教育方針であり、こういった作品が形に表れたことが正直に嬉しい。今後も模索を続け未来へ向かって歩んでほしい。