天野家一族の居住変遷と地域の持続可能性 -福島県柳津町 牧沢地区の暮らしと今後について-
天野北斗
福島県出身
三浦秀一 ゼミ
私が生まれ育った福島県の南西部に位置する奥会津地域は、国内でも有数の豪雪地帯であると共に、戦後の電力不足を補う為の水力発電による電源開発の地として発展してきた歴史がある。各自治体の動きとしては、地域コミュニティの継続に必要な人数を維持することに注視しており、子育て支援に必要な環境の整備や地域文化の後継者の育成?雇用の拡大や地域ブランドの創出方法などを模索している。
そこで本研究では奥会津地域全体が連携し、持続的可能な社会とするには具体的にどのような対策や取り組みが必要なのか研究を行った。また、地域の持続性には土地や建物の維持管理が大きく関わっており、それは即ち一族の継承が直結していると言える。このことから調査の主軸として、自分自身の一族の本家と分家が残っている、福島県柳津町の牧沢地区を中心に、集落の現状や今後の課題点について分析を行った(図1)。牧沢地区は柳津町の中でも山間部に位置しており、高齢者が一人で暮らしているお宅も少なくない。集落には現在19世帯が暮らしており、24軒ある住宅の内5軒は空き家となっている(図2)。実際に牧沢地区で一人暮らしをしている親戚のハツコさんから山間集落での生活や地域住民との関わり、土地と建物の管理の状況などを詳しく教えていただき、これまでの一族の居住変遷の歴史から見た主な移転先の傾向や世代別の周辺地域への進出範囲、教育施設や医療施設といった暮らしに密接した施設との物理的な距離間隔、車を持たない高齢者が集落の外へ移動する際の方法など、広い視点から集落で暮らす人々のあまり明かされない、本当の生活スタイルを研究することができた(図3)。実態として、親族の多くが牧沢地区から車で20分程度の同じ町内、または30分程度の隣接する市町村で生活していることが多く、集落で暮らす高齢者の通院の手助けや空き家となった住宅への往来を行っていることが判明した。こうした一族の事例を元に、親族や家族が連携して建物を日常の中で利用するような半移住型の生活であったり、定年後に生家のある集落へ戻る完全移住型の生活を送るなどの選択肢があり、長期的に会津地域を循環する居住生活の在り方について提案する。